あなたに食べられたい。
翌日、栞里はいつも以上にそわそわしながらジローを待っていた。
試作品を妹以外の人に食べてもらうのは実は初めてのことだった。店のサンドウィッチを食べ尽くしているジローからの評価を栞里は心待ちにしていた。
しかし、昨日と同様に二時を過ぎても一向にジローは現れなかった。
定休日の日曜以外は欠かさず通うジローに会えないと、なんだか調子が狂ってくる。
そのまま一時間が経過し、今日は来ないものと思いかけたその時、予想もしない来客が訪れた。
「こんにちわ」
店の中に入ると男女二人組は楽しげにショーケースを眺めだした。
「私はサーモンアボカドサンドにしようかな。昴くんはどれにする?」
「俺は卵サンドとBLTサンドにしようかな」
注文のため男性が顔を上げ、栞里に視線を送る。その顔だちに見覚えがあった。
あ、この人達……。
「先日は弊社の篝が大変お世話になりました」
男性は流れるように栞里に礼を言った。
「やっぱり!!お二人ともあの日ジローさんを迎えにいらっしゃいましたよね?」
予想が当たり栞里は嬉しくなった。
特に男性の方は見覚えがあった。
先日妹にスマホを見せてもらった時に、美形だと一際騒いでいたからだ。
ジローの勤めている会社の社長だ。