あなたに食べられたい。
どうしようとオロオロするばかりの栞里を見て、昴はある提案をした。
「気になるならこれからジローの様子を一緒に見に行きませんか?ちょうど我々も行くつもりだったので」
栞里の気持ちは既に決まっていた。
「お待ち頂いていいでしょうか?妹に出掛けると伝えてきます」
昴はゆっくり頷いた。
栞里は調理場にいる麻里に出掛けることを伝え店番を任せると、財布とスマホだけを持ち再び店内に舞い戻った。
ジローの家へ向かう道すがらコンビニでゼリー飲料と水を購入する。二人は裏通りを進み、大通りまでやってくると住宅街とは真逆の方向へ進路を変えた。
この先にマンションなんてあったっけと首を傾げていると、二人の歩みが急に止まる。
「着きましたよ」
着いたと言われても、目の前には天高く聳え立つ槙島スカイタワーしかない。
「ジローさんはここの二十二階に住んでるんですよ」
「え!?」
槙島スカイタワーの上層階に居住エリアがあるなんて初めて知った。しかも、ジローがその住人だったなんて!!
栞里が尻込みしていると、昴のスマホが俄に鳴りだす。
電話を終えると昴は栞里に申し訳なさそうに手を合わせた。
「すみません。急に打ち合わせが入って会社に戻らないといけなくなりました。果歩、悪いけど彼女をジローの部屋まで案内したら直ぐに会社に戻ってきてくれるか?」
「はい、わかりました」
果歩は昴からカードキーを預かると、栞里を居住エリア専用のエレベーターまで案内した。階数を知らせるランプが移り変わるのをぼうっと見ていてはたと気がつく。