あなたに食べられたい。
栞里は広々としたリビングに案内されるなり頭を下げた。
「この度は私が差し上げたサンドウィッチのせいで……本当に申し訳ありませんでした!!」
謝罪の声がメゾネットの吹き抜けにこだましていく。
ジローはポカンと口を開けたが、直ぐに我に返り栞里に尋ねた。
「あの二人から何も聞いてないのか?俺が食当たりになったのはもらったサンドウィッチのせいじゃないぞ。消費期限をひと月過ぎた牛乳を飲んだせいだ」
「そ、そうなんですか!?」
誤解が解けると今度はジローの方がばつの悪そうな顔になった。
「こっちこそ悪い。感想を教えて欲しいって言われてたけどあらかた吐いちまった」
「お気になさらず!!私の方は全然大丈夫なので!!」
食当たりになったジローには申し訳ないが、サンドウィッチが原因ではないことがわかると心底安堵した。
すると、急に差し出がましい自分の行為が恥ずかしくなってくる。
「ダ、ダメですね。本当に私ってばよく確かめもせず完全に早とちりして……。お店のことになるとつい空回りしちゃって……。本当に恥ずかしい……」
「恥ずかしがることないだろ。自分の作った物にそれだけ責任を持ってるってことだ。自信を持てよ」
ジローは栞里の頭を優しくポンポンと叩いた。
その瞬間、張り詰めていた糸がプツリと切れていくのを感じた。