あなたに食べられたい。
「あ……」
気がつくと栞里はジローの前でボロボロと泣き出してしまっていた。こんなの迷惑に決まってる。早く止めなきゃ。でも止まらない。
「す、すみません……」
「よくわかんねーけど、泣きたきゃ泣け」
ジローはそう言うとティッシュで頬を拭いてくれた。不器用な優しさが栞里の心に沁みていく。
両親が他界し、自分で店を経営していく厳しさを知った。この先もやっていけるだろうかという不安はいつも栞里の背後につきまとう。
この一年、前だけを見て必死でやってきたが、本音を言えば不安で不安でしょうがなかった。
自信を持てと言われて初めて、自信が持てていなかったことに気づかされる。
同時にジローの言葉になぜこうも心を動かされるのかわかった。
ジローの言葉には裏表がない。いつも真っ直ぐに栞里の心を射抜いていく。
そして、栞里はいつしかそんなジローに仄かな恋心を抱いていたのだった。