あなたに食べられたい。
その夜、自室で帳簿をつけていた栞里は自分のスマホに届いたメッセージに驚愕した。
『この間は泣かせて悪かった。気晴らしにどこか出かけないか?』
それは間違いなくジローから届いたものだった。ジローが栞里の連絡先を知っていると言うことは、犯人は一人しかいない。
「麻里!!これはどういうこと?」
「あ、ジローさん本当に連絡してくれたんだね」
スマホに届いたメッセージを見せながら問い詰めると麻里はあっけらかんと白状した。
「なんでジローさんに教えたの!?」
「気晴らしにお姉ちゃんをどこか連れてってもらおうかと思って。最近、疲れてそうだったし」
「気晴らしって……」
文面から察するにジローは先日栞里を泣かせてしまったことをかなり気に病んでいるようだった。
しかし、それは決してジローのせいではない。
「ジローさんだって面倒なら誘ってこないでしょ?お姉ちゃんだって嫌なら行かなきゃいいだけじゃん。何をそんなに怒ってんの?」
麻里からもっともな反論をされ、栞里は口籠った。
社交辞令として気持ちだけありがたくもらっておくこともできたが、栞里はそうしたくなかった。
自室に戻りひとりになるとジローに返信をする。
結局、二人は店の定休日でもある日曜に一緒に出掛けることになった。