あなたに食べられたい。
うーん。一体何者だろう?
栞里はムクムクと湧いてくる好奇心と日夜戦っていた。
ジローは会社員にしては随分とラフな格好をしている。いつもパーカーにスニーカー。スーツを着ている姿など見たことがない。
かといってフリーランスや無職とも違う。
時折スマホにかかってくる電話でのやり取りを聞く限り、どこかに勤めているのは確かだ。
こんな時間にふらりとやって来て怒られないのだろうかといらぬ心配まで焼いてしまう。
本人に尋ねればよいのだろうが世の中には詮索しない方がいいこともある。
オープンから一年たらず。未だに利益が安定しない今、余計なことをして常連客を失うのはあまりにも惜しい。
栞里はトレーの上にサンドウィッチ二つとコーヒーを置くと会計を始めた。
電子レジのタブレットを叩き、値段を打ち込んでいく。サンドウィッチ二つとコーヒーで締めて千三百円。
「ん?あれ?」
タブレットにエラー画面が表示され栞里は画面を二度見した。いつもなら数秒で決済画面が現れるはずなのに。
「少々お待ちください」
ジローに断りを入れてもう一度やり直すが、結果は同じだった。エラー画面から先に進めない。
どうしよう……。
昔ながらのレジスターならなんとかなるが、電子レジの仕組みは栞里自身まだよく分かっていない部分も多い。
電子レジ導入もかなり渋ったが、時代の波には逆らえず、共同経営者の妹に進められるがまま使い方を覚えた。慣れてくると確かに便利だったが、こういう時は困る。