今日もキミの隣で恋をする
今日もキミの隣で恋をする
しあわせだな、と思う瞬間。
わたしにとってのそれって、一体どんなときだろうか。
「おーい、音寧。お前、まだ寝てんの?」
「んーっ。まだ起きたくない……」
朝。幼なじみで彼氏の杉山 拓斗の声に、わたしはベッドの布団を頭の上まで持ち上げる。
「ああダメだよ、そんなことしちゃ……」
そう言って拓斗はわたしの布団に手をかけ、それを取ろうとする。
「やだ。布団取らないで」
わたしは、布団を力いっぱい握りしめる。
「そんなことしなくても取らないよ。ただ布団を音寧の首元まで下げるだけだから。だって頭まで布団を被られたら、せっかくの音寧の可愛い顔が見えないだろ?」
う。拓斗ったら、朝からそんな甘い言葉を……。
「ねぇ。わたし、まだ眠いんだけど。もう少しだけ、寝かせてくれる?」
閉じていた目を開け、上目遣いに拓斗に言ってみるわたし。
「うわ、それは反則。可愛すぎだから。ったく……しょうがないなぁ、音寧は。それじゃあ、あと5分だけだぞ? 5分経ったら、絶対起きてもらうからな。やくそく!」
そう言うと、拓斗は私の眠るベッドの縁に腰かける。
ああ、あと5分だけでも寝られるんだ。
大好きな人が、すぐそばにいてくれて。
一度は起きなきゃと思ったけれど。
あと5分だけでもこの温かい布団の中にいられると思うと、小さな幸せを感じる。
──拓斗は、いつも決してわたしを無理やり起こそうとしないところが優しい。
「……おーい、音寧。約束の5分経ったから、起きてーっ」
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