今日もキミの隣で恋をする
今日もキミの隣で恋をする


しあわせだな、と思う瞬間。

わたしにとってのそれって、一体どんなときだろうか。


「おーい、音寧(ねね)。お前、まだ寝てんの?」

「んーっ。まだ起きたくない……」


朝。幼なじみで彼氏の杉山(すぎやま) 拓斗(たくと)の声に、わたしはベッドの布団を頭の上まで持ち上げる。


「ああダメだよ、そんなことしちゃ……」


そう言って拓斗はわたしの布団に手をかけ、それを取ろうとする。


「やだ。布団取らないで」


わたしは、布団を力いっぱい握りしめる。


「そんなことしなくても取らないよ。ただ布団を音寧の首元まで下げるだけだから。だって頭まで布団を被られたら、せっかくの音寧の可愛い顔が見えないだろ?」


う。拓斗ったら、朝からそんな甘い言葉を……。


「ねぇ。わたし、まだ眠いんだけど。もう少しだけ、寝かせてくれる?」


閉じていた目を開け、上目遣いに拓斗に言ってみるわたし。


「うわ、それは反則。可愛すぎだから。ったく……しょうがないなぁ、音寧は。それじゃあ、あと5分だけだぞ? 5分経ったら、絶対起きてもらうからな。やくそく!」


そう言うと、拓斗は私の眠るベッドの縁に腰かける。


ああ、あと5分だけでも寝られるんだ。


大好きな人が、すぐそばにいてくれて。


一度は起きなきゃと思ったけれど。


あと5分だけでもこの温かい布団の中にいられると思うと、小さな幸せを感じる。


──拓斗は、いつも決してわたしを無理やり起こそうとしないところが優しい。


「……おーい、音寧。約束の5分経ったから、起きてーっ」


< 1 / 20 >

この作品をシェア

pagetop