罪人とお嬢様の甘くて危険な恋を
すると、カツンッっと何かが落ちた音が響き、蛍は一瞬ハッとした。
人が落ちた時のような大きな衝撃音ではない。 気になって道路を見ると、道路に光り輝く何かが落ちているのがわかった。上を辿ると、彼女が耳に触れて、何かを手にするとそのまま腕を伸ばして、そのまま何かを落としていた。また、カンカンッと無機質なコンクリートの上に音を鳴らしながら落ちて行くのが見えた。車が途切れている時をねらっているようだが、捨てているのだろう。
耳に触れたとすると、ピアスやイヤリングだろうか。
蛍は、やはり気になり、歩道橋の上まで登って行く。
近づいていくと、女性は随分と若い事がわかった。きっと自分より年下で大学生ぐらいだろうか。服装的にはOLにも見えるので、実際の所はわからない。とにかく、若者が危険な行為をしているのは確かなのだ。
蛍は自分の職業的にも無視出来ない状況に、やっとの事で近づき声を掛けることにした。
「お姉さん、今から死ぬの?」
「……」
「それに何投げてたの?危ないよ」
「光る魚に餌やりをしていました」
初めて聞く彼女の声は、とても澄んでいて大人っぽいものであった。どちらかというと低い声かもしれないが、ナレーターになったらきっと聞く人を癒してくれそうな、そんな声音。まだあったばかりだというのに、彼女らしいな、と思ってしまうから不思議だ。
けれど、彼女の発した言葉の意味がわからずに首を傾げると、下ばかり見ていた女の視線がこちらを向いた。
丸い瞳は髪と同じ色の黒目は大きく、影になっているはずなのに、スモーキークオーツのように透けて輝いて見えた。肌は全身が真っ白であり、モデル顔負けの美肌であった。陶器肌というのだろうか。本当に東洋の人形の肌のようであったし、容姿も端麗であった。
「光る魚って車だよね。車にあげるの?」
「車は人間が運転していますよね?私は要らないから、差し上げようと思いまして……」
「アクセサリー?投げたら壊れちゃうんじゃない?」
「この世で一番モース硬度が高い石だから大丈夫です」
「……硬度が高いって、ダイヤモンド!?」
思わず声を上げて歩道橋の下を見る。丁度車が走っており車道を照らしているが、どこに落ちているのかここからではさすがにわからなかった。