罪人とお嬢様の甘くて危険な恋を
2、
2、
「ほたるー!おまえ、土曜日なのに何で元気なんだよ。ほとんど寝てないだろ?」
「……えび先輩、重いです」
「海老名先輩」
「先輩だって俺の事、ほたるって呼んでるじゃないですか。あ、鶴先輩の方がいいですか?」
「おまえの大恩人さんがほたるって呼んでるじゃないか」
「それはそれです。先輩はダメです」
「おまえな、一応俺も先輩だぞ」
PCに向かっていると、肩を組むように腕を回して絡んできたのは蛍の先輩である海老名千鶴。名前に2体のめでたい動物がいる、変わった先輩である。ちづるという名前だが、男だ。そこも少し変わっている。
あまり良い環境から来ていない蛍を、怖がったり嫌がったりしないで、何故か可愛がってくれる不思議な2つ上の先輩だった。
だが、本当ならば周りの反応が正常なのだ。
蛍は元犯罪者であった。家の環境があまり良くなかったのが原因なのかもしれないが、その道を選んだのは自分。誰のせいでもなく自分が悪い。それが若かりし頃だとしても、犯罪は犯罪はなのだから。
蛍の家は所謂、裕福な家庭であり地位が高かった。そんな優秀な両親の遺伝のおかげなのか、蛍も生まれた時から頭脳明晰であった。医者になれるぐらいの知能は自他共にあったと認められていた。だが、蛍が興味を持ったのはパソコンの世界であった。パソコンの中には自分の知らない世界が山のようにあると、宝箱のように思えて仕方がなかったのだ。パソコンの改造してみたり、ソフト開発をしてみたり、簡単なロボットを作ったりと両親に見放されていたが、毎日が楽しかった。
けれど、若気の至りがまずかった。興味本位からとあるシステムに不正アクセスしてしまったのだ。蛍からしてみれば、こんな安易なシステムで自分の会社の情報を守っているつもりでいる方がおかしいのではないかと思えてしまうほどに、蛍達はいとも簡単に侵入出来てしまったのだ。
だが、その侵入した会社が大企業すぎた。すぐに警察にバレてしまい、学生だった蛍達は厳重注意、両親もかなり怒られてしまった。プライドの高い両親家族は激怒し、蛍を家からすぐに追い出して絶縁までされたのだった。