結婚相手は義兄でした~追想のハルジオン
正直親的には、別に門限が九時でも守る必要はあまり無いと思っている節がある。
親自身もパーティーやらデートや何やらで家を空けることも多いし、私が『誰と何処に居て、何時に帰るか』を伝えれば何も問題はない。

だがら問題は……この人だけだ。
九時を過ぎたら怒涛の鬼電が始まり、居場所を伝えようなら即お迎えが来てしまう。

いくら私が抵抗しようと、この爽やかな笑顔にみんなが騙されてしまう。
「素敵なお兄さんねー」なんて言うが、この人はただ心配性というわけじゃない。
私を外に出したくないだけなのだ……私はこの家の一員ではないと思っているからだろう。


確かに戸籍上では、私の名前は『北大路 (はるか)』になっている。
でも今まで、そう名乗ったことはない。


会社でもそうだけど、私はずっと前の苗字のまま『吉村 』で通している。
この家に来た時は、私の名前はまだ『吉村 遥』で、しばらく経って正式に『北大路 遥』になった。
勿論正式な書類は、全て北大路が使われている。
だけど今まで学校でも、会社でも通しているのは『吉村』の方。

だから私は、この家の隠された存在だった。
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