僕の特技は秘密です
夕飯を済ませた後、沙紀さんは一人部屋で今日の取材内容を持ってきた仕事用のラップトップにまとめていた。
その間、僕と橘はロイヤルスイートのリビングで橘と二人で酒を飲んでいた。

「神社でよく遊んでた女の子って今でも仲がいいの??」
神社でチラッと話した『つーちゃん』のことを聞いてきた。

「いや、子供の頃に会ったっきりだな。」
「どんな子だったの??」

「今思うと不思議な子だったなぁ。」
「えー、なんか意味ありげ。詳しく聞かせろよー。てか、今までそんな話聞いた事なったな。」

僕は『つーちゃん』との事を話し始めた。

「最初に出会ったのは…、ほら、ウチの両親って仲が悪いときあったじゃんか、その時、母が良く僕を連れて実家に家出をしてたんだよ。だから、あの神社に神様に両親が仲良くなるようにお願いに来たんだ。そしたら、お社の横にある椿の木の下で彼女がうずくまって泣いてたから、迷子?って聞いたら神社の娘だって言っててさー。ママがいないって言うから一緒に探すことにして仲良くなったんだ。笑顔がめちゃくちゃ可愛くてよく覚えてるんだ。」
『つーちゃん』の笑った顔を思い浮かべるとにやけてしまった。
「その子ってもしかして、黒髪の前髪ぱっつんストレート?」
確かに『つーちゃん』の見た目は前髪は少し長めだったが、まっすぐ切りそろえられており、そんな感じだった。

「えっ?なんでわかった?」

橘はニヤニヤしながら、
「だって、それ、お前の歴代の好きな人の共通じゃん。」
「あ…。」
橘に言われるまでまったく気づかなかった。今思えば、小・中・高と好きになる女子はそのタイプだった。
「一条、それ、実は初恋だったんじゃね?」

祖父母の家では一緒に遊ぶ友達がいなかったので、当時は一緒に遊ぶ子がいて嬉しい気持ちが勝っていたが、『つーちゃん』のしぐさの一つ一つを覚えていたり、未だに笑った顔を思い出し優しい気持ちになれるのは橘のいう通り初恋だったからなのかもしれない。

…しかし。
彼女のことを忘れられない原因は別にもあった。
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