僕の特技は秘密です
「確かにそうだった。」

僕たちの会話を聞いて、くすっと、つーちゃんが笑った。

「そう言えばさっきの彼、夜に電話するって言っていたけど、椿ちゃん彼氏とか??」

ナイス!橘!あれからずっと僕が気になっていたことだ。
別れ際に頭も撫でやがって!!

「あぁ、大ちゃんのことですね。ただの幼馴染なんです。彼のお父さんがこの村の村長なので父はくっつけたがってますが…。」

「彼氏はいないの?」
橘は話を続け、僕は隣で黙って聞いている。

「受験があるので、それどころじゃないですよ~」

つーちゃんは少し頬を赤くしながら答えた。

「…そういえば、こないだメッセージに書いてあったけど、お花の模様の鯉、まだ生きてるんだって?」
「そうなんです!長生きですよね!鯉って20年とか30年とか生きるらしいですよ!見に行きます??」
「うん、見たいな!橘も見に行く?」
「あー…。俺はいいや、ここで休んでる。」

二人になれるように気を利かせてくれた。

つーちゃんと二人で先ほど龍の彫刻が見つかった石橋のところへ行きと二人で池を見下ろす。

「私、鯉の餌持ってきたんです。」

制服のポケットから餌を取り出し、池に撒くと鯉がたくさん集まってきた。

「ほら!あそこ!」

つーちゃんが指をさしたあたりに、子どもの頃一緒に見たお花の模様の鯉がいた。

…懐かしいな。
つーちゃんと過ごした時間は僕が生きてきた時間のほんのわずかな時だったのに、会っていなかった時間の方が無かったかのようだ。
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