僕の特技は秘密です
家族を味方につけたところで部屋に戻り、つーちゃんにアプリのメッセージではなく直接電話をかける事にした。

スマホを耳にあて通話になるまで待つ。
まだ夕食中だろうか…。なかなか通話にならない。また、かけ直そうかと通話を切りかけた時、

「もしもし…。」

スマホからつーちゃんの声が聞こえたが、声のトーンが低い。

「あ、もしもし。つーちゃん?勉強はどう?捗ってる?」

当たり障りのない会話から始める。

「…うん。頑張ってるけど…。」

一瞬、鼻をすするような声が聞こえた。

「もしかして…。泣いてる?」

「せっかく電話してくれたのにごめんなさい…。もう、どうしたらいいのかわからなくて…。」

つーちゃんからお婆さんの施設が取り壊し予定になったこと。それをきっかけに村長さんとつーちゃんのお父さんが大吾くんと結婚させようとしていること。さらに大吾くんから告白されたことを聞かされた。そしてそのことが原因で受験勉強に集中できずどうしたら良いかわからないと…。

ただでさえ受験勉強はストレスたまるのに…。
周りの人たちは何やってんだよっ!
時計を見ると20時過ぎたところだった。明日の授業は午後からだ。

「つーちゃん、僕、今からそっちに行くよ。考えがある。」

軽く身なりを整え、車のキーを掴みリビングへ向かう。

「父さん、僕、やりたいことができた。父さんの会社に入れて。」

「おっ…。そう、か。」

突然の僕の発言で驚いていたが、嬉しそうな表情に変わったのを見逃さなかった。

「詳しくは明日話すよ。ちょっと山切村に行ってくる。」

「えっ?今から?」

母さんは戸惑っていたが何かを察したのか、

「女の子に午前様にさせちゃだめよ!」

とだけ言って送り出してくれた。
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