ゲームクリエーターはゲームも恋もクリアする
若葉は、母の退院の日まで付き添った。

何度も打ち明ける機会はあったが、母と姉には、なかなか有野社長との結婚のことは言い出せずにいた。


いよいよ東京に戻る日の朝に、若葉はやっと覚悟を決め、母と姉に有野社長と結婚することを伝えた。

「私、有野社長と結婚することにしたから、これで旅館も続けられるから、安心して。」

猛反対される覚悟で話したが、母と姉の反応は意外なものだった。
姉は驚きを隠すかのように手で口元を抑え、

「若葉・・・。」

と言うのが、精一杯だった。一方母は、

「ごめんね、若葉・・・。」

と、泣きながら若葉に詫びた。

若葉は、精一杯気丈に振る舞った。

「私は平気。大丈夫だから。2人とも気にしないで。とりあえず、一旦東京に戻るから。」

と、言って、タクシーに乗った。一刻も早くその場を立ち去りたかったからだ。

母の涙や姉の声を聞くと、決心が揺らいでしまいかねない。

本当は好きな人と結婚したい。冬英さんと結婚したい。
有野社長なんかと結婚なんてしたくない。

これ以上長い時間一緒にいると、母と姉に甘えてしまい、素直な気持ちを吐露しかねない。
若葉は、タクシーの中で、目尻からこぼれる涙をそっと抑えた。
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