ゲームクリエーターはゲームも恋もクリアする
「はい。ええ。では、出来るだけ早くお願いします。
はい。では失礼します。」

佐野は電話が終わると、東堂が持っていた婚姻届をすっと取り上げた。

「これは、河合さんのだろ。」

「・・・。」

「破ってしまいそうで怖いから、俺が預かる。どうせ仕事で会うから俺の方から
河合さんに返しておくよ。とにかく、今調べてもらってるから、分かり次第
連絡する。いいか?この件に関しては勝手に動くな。」

「・・・。」

東堂は黙ったままだった。佐野が念を押す。

「東堂、いいか?有野グループは大企業だし、政財界にも顔が広い。慎重に
動かないと。俺に一旦預からせてくれ。とりあえず、お前は今の仕事に
集中してくれ。」

「・・・分かった。」

目は虚ろだが、東堂がやっと返事をしてくれたので、佐野は安心した。

東堂は立ち上がると、PCに向かい、仕事に取りかかった。

その後ろ姿を見てから、佐野は東堂のマンションを後にした。
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