ゲームクリエーターはゲームも恋もクリアする
翌日(若葉の勤務先のオフィス)

若葉のベリーズソフトへ出した企画も順調に進んでおり、東堂との関係も
何のわだかまりもなく、順調だった。もちろん、負債の件もきっちり解決していた。

すべて解決したかに思えたが、姉の和葉から、若葉の携帯に勤務時間中に電話が入った。

仕事中に電話してくるなんて、何かあったのかしら?

若葉は、自分の席から立つと、廊下に出てから電話に出た。

「若葉?忙しいとこごめんね。」

「うん、大丈夫。どうかした?」

「それがね、いや、口で言うより、有野ホテルグループのホームページを見て
もらった方が早いかも。とりあえず、うちキャンセルの連絡がいっぱい来てて。
またお客様があっちに流れてるの・・・。」

「分かった。見てみる。」

「うん、お願い。」

若葉は電話を切ると、デスクに戻り、ノートPCで有野ホテルグループの公式
ホームページを検索した。

開くと、実家の近くの有野グループのホテルが大々的に感謝セールと謳い、宿泊料金割引セールを
開催していた。それも、数週間どころではなく、半年以上もの期間だ。

「こんなことされたら・・・。」

実家の旅館は、今回は東堂さんが立て替えてくれたおかげでピンチを乗り切れたが、
新たな宿泊客集客の打開策は何も考えていなかったのだ。ただでさえ、有野グループにお客様を取られているのに、
これ以上お客様を取られてしまうと、またすぐに負債を抱えてしまう。かといって
有野グループに対抗して宿泊料金を下げてしまうと、直ちに旅館は立ちいかなくなる。
若葉は両腕を組みながら左右にゆっくりと椅子を揺らし、悩んでいた。

「どうしたもんか・・・。」

若葉は知らず知らずの間に、心の声が漏れていた。

「どうかしたんですか?」

隣の席の坂本君が、若葉に声をかけた。

「うううん、何でもないの。」

と、答えたが、坂本君は、ひょこっと若葉のノートPCの画面を覗き込んだ。

「ああ、有野グループ、大セールやってますね。」

と言った。

「まあ、すごいもんね。ここは。」

と、若葉が言うと、坂本君が、

「すごいと言えば、ベリーズソフトの新しいオンラインゲームしました?」

と、若葉に言ってきた。

「オンラインゲーム?」

「ええ。これがけっこうおもしろくて、はまっちゃってる人、続出してるみたいで。
まあ、僕もその中の一人なんですけどね。」

と言って、坂本君は、自分の携帯を出すと、そのゲームのアプリを開き、
若葉に見せた。若葉はその画面を見て驚いた。

「うちの旅館そっくり・・・。」
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