ゲームクリエーターはゲームも恋もクリアする
ベリーズソフト本社

「どうされたんですか?今日は、約束はなかったはずですが?」

突然の訪問にも関わらず、佐野は時間を取ってくれた。

「あの、新しいオンラインゲーム、うちの旅館をモデルにしましたか?」

「ええ。良かった。お気づきになりましたか?河合さんに認められたってことは、自信になりますよ。」

「旅館の集客のためにしてくださったんですよね?どうしておっしゃってくれなかったん
ですか?」

「一応、女将さんには、宿泊した時に、この旅館を参考にしたいと言って、ちゃんと許可も
頂きましたし、逆に、先に話して、集客が見込めなかった場合、がっかりさせてしまうので、
いい結果が残せた場合のみ、お伝えしようと東堂と決めてたんですよ。あ、ちなみにこのゲーム、
東堂が2週間で作りました。会った時に褒めてやってくださいね。河合さんに褒められるのが一番
喜びますから。」

と言って、佐野は満面の笑みで笑った。

「あの、びっくりすることばかりで、本当にありがとうございました。」

「いや、まだ、どうなるかわかりませんから。」

と、佐野は謙遜気味に言ったが、想像をはるかに超える結果となった。
1か月も経たないうちに、オンラインゲームは大ヒットし、週間ランキングで育成型ゲーム国内ダウンロード数1位となり、
そのまま順位をキープ。一旦、有野グループの大セールの影響でキャンセルが増えた若葉の実家の旅館も、
2年先まで予約が取れない旅館になった。旅館でも、ゲームのキャラクターのグッズをお土産物店に置き、もちろんグッズ販売の権利は若葉の務める会社が持ち、若葉が企画したゲームオブベリーズのコラボも大成功を収めた。
傾きかけていた旅館は、一気に息を吹き返した。ゲームの大ヒットにより、東堂が立て替えた負債分の金額も、
すぐに回収することが出来た。その結果、
有野グループの駅前のホテルは半年も経たないうちに撤退することとなった。
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