ゲームクリエーターはゲームも恋もクリアする
プレゼンが終わると、佐野さんと東堂さん以外の社員たちは、小会議室を出て行った。

東堂さんは、若葉に近づいてくると、いきなり、

「初めまして!東堂冬英(かずひで)と言います。」

と言って、若葉に名刺を差し出した。

ここは、初対面のふりをしろということ?

若葉も合わせて、

「は、初めまして。河合若葉と申します。」

と言って、名刺交換をした。坂本君も急いで名刺を出し、交換する。

「お目にかかれて光栄です!ずっとファンでした!」

「ありがとう。」

「あの、サインと写真いいですか?」

と、坂本君が言ったところで若葉が止めに入った。

「坂本君、やめなさい!東堂様、坂本が大変失礼しました。」

「いえいえ大丈夫ですよ。坂本くん、申し訳ないが写真は勘弁してもらえるかな。サインならいいよ。」

「ありがとうございますっ!!」

と、坂本君は、元気よく言うと、鞄から、色紙とペンを出し、東堂さんに渡した。
東堂さんは、サラサラとペンを走らせた。

佐野さんが、坂本君に向かって、

「うちの東堂は、メディア嫌いでね。どこから流出するから分からないから、写真も断ってるんだよ。悪いね。」

「いえいえ、こちらこそ、すいませんでした。確かにこんなに有名人でも、正体不明ですもんね。」

若葉は坂本君を肘で軽くこつくと、

「なんで、色紙なんて持ってるの?」

と、東堂さんが、サインを書いている間に、若葉は坂本君に小声で聞いた。

「だって、もし会えたら、書いてもらおうと思ってたんで、いつも鞄に入れて持ち歩いてたんですよ。」

「はい、これでいいかな。」

と、言って東堂さんが色紙とペンを坂本君に返した。

「ありがとうございます!!家宝にします!」

「坂本君って面白いね。」

と、佐野さんが言う。

「申し訳ありません。学生気分が抜けてないようで。厳しく注意しておきますので。」

と、若葉は、佐野さんと東堂さんに謝った。
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