ゲームクリエーターはゲームも恋もクリアする
レストランのフロアに着くと、
ここでもまた、常連のようで、

「東堂様、お待ちしておりました。」

と、窓側の夜景が見える席に案内された。

席に着くとメニューを渡された。
日本語で表記されていても、よく分からないカタカナが並んでおり、
若葉はちんぷんかんぷんだった。

「決まった?」

と、東堂に聞かれたが、

「すいません、よく分からないので、東堂さんと同じもので。」

と言うと、東堂は、優しく、

「じゃあ、お肉と魚はどっちが好き?さっぱりとこってりどっちが好き?
ワインは甘口と辛口どっちが好き?辛いのは平気?」

などなど、丁寧にひとつひとつ若葉の好みを聞いてくれ、
それに合うメニューをオーダーしてくれた。

東堂さんて気遣いがすごい・・。
と、若葉は思った。先ほどもイルカの大きなぬいぐるみをプレゼントされた時、
すぐに東堂が持ってくれた。ホテルに着いた時も、クロークにぬいぐるみを預けに
行ってくれたり、タクシーの運転手や、水族館の人たちにも御礼をちゃんと言っていた。
すごい人なのに・・・本来なら周囲の人たちから気を遣われる側なのに、それ以上に
周りに気を遣っているように思えた。

シャンパンが来ると、東堂は

「今日はありがとう。」

と、言い、若葉も、

「こちらこそ、今日はありがとうございます。」

と言って、二人でグラスを鳴らして微笑んだ。


2人は食事をしながら、いろんな話をした。

仕事の話は抜きだったので、若葉は会話が続かないと思っていたが、
素敵な夜景、豪華なフレンチ、ワインの力もあり、意外と話が弾んだ。

ただ、どうしても若葉は東堂に聞きたいことがあった。

なぜ今までどれだけプレゼンしてもダメだったのに、今回企画が通ったのか。

ただ、それを聞いてしまうと、約束違反になってしまう。

若葉は聞きたいけれど聞いてはいけないと自分に我慢を強いているうちに、知らず知らず
ワインの量が増えており、気が付くと少し酔ってしまっていた。若葉はこれでも社会人5年目で、
お酒の場にも行慣れており、自分が飲める適量もよく分かっている。
いつもなら、これくらいで酔ってしまうことはないが、仕事での寝不足と緊張が影響したのか、
今日は早々に酔ってしまった。
若葉は東堂と話をするのが楽しく、知らず知らずのうちにさらにワインがすすんだ。
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