ゲームクリエーターはゲームも恋もクリアする
東堂の顔がゆっくりと若葉の顔に近づく。そして、東堂の唇が若葉の唇にゆっくりと近づいた。

しかし、あと数センチの所で、東堂はピタリとその動きを止めた。

そして、若葉の両肩に手を置くとグイッと若葉から体を離した。東堂は堰を切ったように、

「違う!こういう事がしたいんじゃないんだ!いや、出来ればしたいけど。ん?何を言ってるんだ、俺は。」

と、言うと、若葉に背を向け、自分の頭を抱えた。

若葉は、東堂の様子にはっとした。

もしかして、東堂さんに私が色仕掛けしたみたいになってる??

若葉は顔から火が出るんじゃないかと思うくらい恥ずかしくなった。そして慌ててベッドから降り、

「本当に重ね重ね本当に申し訳ありません。あの、私のバッグは?」

「え?ああ、そこに。」

と、東堂はソファを指差した。東堂が指差す方を見ると、そこには若葉のバッグと服の入った紙袋、イルカのぬいぐるみの入った袋がきちんと並べて置かれていた。若葉は、スタスタとソファに近づき、バッグと紙袋を両方の手で掴むと、くるりと東堂さんの方に向き直り、深々と頭を下げた。

「東堂さんを誘うようなことをして困らせてしまい本当にごめんなさい。企画は最後まできちんとやりますので、
どうか今日の事は忘れてください。また仕事でよろしくお願い致します。」

と一気に言うと、ドアの方に一目散に向かった。

「待って!」

という声と同時に、若葉は後ろから東堂さんに抱きしめられた。
< 30 / 128 >

この作品をシェア

pagetop