ゲームクリエーターはゲームも恋もクリアする

理不尽な要求


若葉の部屋

「で、二人揃ってわざわざ来るってことは、連れ戻しにでも来たの?」

若葉は、父に対して警戒心を隠せなかった。
その様子を見て、母が話し出した。

「実はね、旅館の経営がうまくいってないの。」

「なんで?お姉ちゃんに任せてるんじゃないの?」

姉の和葉は、二年前に同じ旅館の板前と結婚し、正式に若女将として
旅館を切り盛りしていた。

「実は1年前に駅前に大きなホテルが建ってね。そっちにお客さんが流れていっちゃって。
営業を続ければ続けるほど、赤字が膨らんで。若葉、帰ってきてちょうだい。」

「どうして私が?経営なんて出来ないわ。知り合いのコンサルタント、紹介しようか?」

「もう、そういう段階じゃないの。2億近く負債を抱えてるの。」

「え?噓でしょ?そんなのもう立て直せないんじゃ・・・。」

というと、ここで、やっと父が口を開いた。

「その駅前のホテルのオーナーが、お前との結婚を条件に融資してくれることになった。」

「はあ?なんでそんな会ったこともない人とっ!」

理不尽な話に若葉も口調が強くなる。

「いや、2年前の和葉の結婚式でお前を見初めたらしくてな。ぜひにと言われてる。」

「誰かぜんぜん分からないんだけど。いくつぐらいの人?」

と聞くと、母が徐に写真を取り出した。
お見合い用の写真で、ご丁寧に釣書もついていた。

年は母と同じで54歳。ガタイが良く白髪交じりの頭だ。
有野ホテルグループの社長で、年商、年収ともに桁違いだった。

若葉は写真を見ても、さっぱり思い出せない。

「で、この人と結婚しろって本気で言ってるの?」

「お前が断れば、この話は和葉に行くだけだ。」

「はあ?なに言ってるの?お姉ちゃんは結婚してるよね?」

「先方は、どちらでもいいと言ってるんだよ。」

若葉は開いた口が塞がらなかった。

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