ゲームクリエーターはゲームも恋もクリアする
「有野さん、今日はお見合いのお話、お断りしに参りました。」
と、若葉は有野社長に言った。
「本当に断ってしまってもいいのかい?ご実家の旅館、潰れますよ。」
と、有野社長不敵な笑みを浮かべながら言った。
「実は、私、将来のことで実家と折り合いがつかなかったので、高校卒業と同時に家を出ててるんです。」
「まあ、それは聞いてますよ。」
「じゃあ、お話は早いです。正直申しまして、私は実家の旅館には恩も未練もありません。旅館がどうなろうと
知ったこっちゃないんです。だから、実家の旅館が潰れようがどうっだっていいんです。だから、お見合いの
お話はなかったことにしてください。」
「若葉さんの気持ちはよく分かりました。でも、私が融資しなければ、実家の旅館を売却したところで、
相当な額の借金が残りますよ。それでご両親、お姉さんご夫妻はやっていけますか?」
「ですから、私には関係ない話なんです。」
「ほう・・・。」
「ちょっと、失礼します。」
と、言って、若葉はバッグを取ると、お手洗いに向かった。
若葉が、出ていくと、
「木下っ!!」
と、有野社長が大きな声で秘書の木下を呼んだ。
「どういうことだ?話が違うじゃないか!しかも、眠る気配もない。」
「確かにお茶に薬を入れましたが・・・。ああ、一口も口をつけてないですね。」
と、木下は若葉に出した湯飲みを確認した。
「警戒心が強すぎるな。さすが瑞葉(みずは)さんの娘だ。彼女の周りにネズミが
うろついてないか確認しろ。」
「はい、すぐに。」
「あと早く食事を運んでくれ。何か食べればお茶に手を伸ばすだろう。」
「承知しました。」