ゲームクリエーターはゲームも恋もクリアする

誤解

午後になり、若葉と坂本君はベリーズソフト本社の会議室で、1時間ほど、
佐野さんをはじめとするプロジェクトチームの人たちと打合せをした。

打合せが終了し、若葉と坂本君が片づけをしていると、佐野が若葉に、

「河合さん、この後、少しお時間よろしいですか?」

「え?あ、はい。もちろんです。坂本君は・・・」

「別件なので、河合さんだけで大丈夫ですよ。」

と言われ、若葉は、坂本君に先に会社に戻るように言った。

あとで、何の話してたんですか?と坂本君から質問攻めに遭いそうなことは
容易に想像がついた。

会議室には佐野と若葉だけになった。

佐野は扉を開け、周りに誰もいないことを確認すると、再びパタンと扉を閉めた。

「すいませんね、突然。」

「いえ。」

「もう分かっていると思いますが、残っていただいたのは東堂のことです。」

「・・・はい。」

「お付き合いされたばかりのところで申し訳ないですが、週刊誌の写真は東堂です。
すぐに、こちらからも、詩乃の事務所からも出版社の方に連絡を入れたので、記事は
すでに削除されました。ここだけの話でお願いしたいのですが、二人は兄妹です。」

「え?」

「妹に久々に会って、高額な物をねだられたようです。ただ、詩乃の事務所的には、
詩乃の出身年齢すべて非公表にしているので、兄妹という事実は伏せています。
ですので、恋人関係ではないという否定だけしました。そして、早期収束のためにも、
東堂には会社には来ないよう言ってあります。もちろん外出も控えるようにと。」

「分かりました。ご説明いただきありがとうございます。」

「それと、酒井さんですが、会社を辞めて頂きました。」

「そのことなんですが、辞めてもらう必要はないんじゃ・・・」

「東堂がストレスなく仕事に打ち込める環境を整えるのが私の役割ですから。
河合さんのせいではありません。」

「まあ、いずれにしても、東堂の正体がバレることの方が会社には
大きな損失になるんです。とりあえず、河合さんには今の企画に集中してもらって
・・・」

と、言いかけたところで、

バタン

と、いきなり会議室の扉がノックもなしに開けられた。

2人が振り返ると、東堂さんが立っていた。
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