ゲームクリエーターはゲームも恋もクリアする
「なに言ってるの?お姉ちゃん。自分が何言ってるかわかってる?」

若葉は強い口調で和葉に言った。

「もちろん分かってるわ。でももうこうするしか・・・。」

和葉は半分涙声で言った。

「剛さんはなんて言ってるの?生まれてくる子供はどうするの?」

若葉は感情的になり、次々と和葉に言葉をぶつけた。

「子供はまだ生まれる前だから、生まれてくる子は有野社長の子供として
育てるの。旅館は続けられるし、従業員も誰一人辞めなくてすむわ。
剛さんにはこれから話す。」

「そんなことしたって、皆不幸になるだけよっ!」

「じゃあ、旅館が潰れたあげく2億近くの借金かかえて、従業員路頭に迷わせて、
どうすればいいっていうのよ!若葉が私の代わりに有野社長のとこに行ってよっ!」

和葉の発言に、若葉も一瞬黙り込んだ。

「ご、ごめん。冗談よ、若葉。若葉はこっちのことは何も心配しなくていいから。
お母さんの顔見たら東京に帰って。」

和葉はそそくさと、談話室を出た。

あれはお姉ちゃんの本音だ。有野社長に周りを固められ、旅館を廃業することさえも出来ない。
従業員を守るには旅館を続けること。今旅館を続けられる唯一の方法は、有野社長に頼るしかない。
誰も好き好んで、あんな人のところに嫁ぎたくはないだろう。

若葉は飲み干したアイスティーの缶をゴミ箱に捨てると、母の病室へ向かった。
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