ゲームクリエーターはゲームも恋もクリアする
「次の帰省の時に記入して持ってきます。」
と、若葉が震える声で言うと、
「いや、来週にでも、木下に東京まで取りに行かせる。」
と、有野社長が言った。
「え?そんなに急ぐ必要がありますか?」
「私はね、もう取り逃がしたくないんだよ。君のお母さんの時のように。」
「分かりました。取りに来ていただけるのなら、こちらとしても助かります。」
「もし何かあれば、木下に言ってくれ。」
「分かりました。では、失礼します。」
「ちょっと、待ちなさい。瑞葉さんの具合は?」
「検査結果も異常なしで、過労だったようです。あと2~3日で退院できそうです。」
「それはよかった。病院の費用はこちらでもつから、ゆくり休んでもらいなさい。」
「いえ、そういうわけには・・・。」
「もう家族になるんだ。気にする必要はない。」
「はい。ありがとうございます。では、失礼します。」
と言って、若葉はスイートルームを後にした。
若葉が出て行ったあと、有野社長は、
「木下、東京に行くついでに、あの娘の身辺調査もしておいてくれ。」
「かしこまりました。」
「やっと、やっと、瑞葉さんが手に入る!しかも、あの頃の瑞葉さんと、今の瑞葉さんの
両方だ!」
「社長、お言葉ですが、若葉さんは瑞葉さんでは・・・。」
「あの頃の瑞葉さんなんだよ。おまえは知らないからそんなことが言えるんだ。遺伝子とは
すごいなあ。あの娘は若かりし日の瑞葉さんそのものだ!瓜二つだよ。ははははは!」
と、有野社長は大きな声で、豪快に笑った。