探偵少女
case1
 三崎知由。


 腰あたりまである黒髪が風に踊らされ、はっきりとした二重の目と、薄紅色の唇が顕になる。


 しかしその瞳は儚げで、見た者の目を奪っていく。


「あの子、綺麗……」


 知由が道を歩くと、すれ違った女子高生が振り向いて羨ましそうに言う。


 知由の隣を歩いている中矢友奈は、つまらなそうな表情を浮かべる。


「見た目しか知らないから、あんなふうに言えるのよね」


 当の本人は興味なさそうだ。


「ちょっと三崎、聞いてる?」


 確実に話しかけられても、それにすら答えない。


 知由の耳を引っ張ると、ようやく目が合う。


「なに」


 知由の無表情が、少しだけ崩れる。


「全人類に、三崎の性格の悪さを教えてやりたいって話」
「言いたいなら言えばいい。他人の声なんて、どうでもいい」


 やはり知由は興味ないようで、友奈はさらにため息をつく。


「こんな見た目だけの女のどこがいいんだか」
「中矢より頭はいいけど」


 明らかに見下した発言ではあるが、事実のため、友奈は言い返せない。


「三崎のそういうところ、本当キライ」
「だったら、なんで一緒にいるの」


 表裏なく、バカ正直に言ってくれるところが、気に入っているから。


 なんて言えなくて、友奈は適当に誤魔化す。


「ところで、今日は雪兎さんはいるの?」


 友奈の浮かれた顔を見て、知由はため息をつく。


「あの役立たずの、どこがいいんだか」
< 1 / 78 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop