探偵少女
 一弥がドアを開けると、知由は部屋の隅で、パイプ椅子に足を組んで座っている。


「三崎が話を聞くわけじゃないんだな?」


 知由が座っている位置を確認して、一弥は呆れた表情を見せる。


 知由は不機嫌なオーラを隠さない。


「私は興味ないから」
「出たよ、女王サマ」


 一弥は言いながら、真ん中に置いてある長机に収まっているパイプ椅子を引き、腰を下ろす。


「どうぞ、座ってください。狭いところですけど、一応綺麗にはしてるんで」


 晴真は、一弥の向かいに座る。


 慣れない状況で、緊張から表情がこわばる。


 落ち着かない晴真を見て、一弥は微笑む。


「緊張されてます?」
「こういうのは、初めてなので」
「探偵に依頼なんて、そう経験するものでもないですからね」


 一弥は思い出したように立ち上がり、背後にある小さなボックスを開ける。


 一枚の紙と、ボールペンを晴真の前に置く。


「依頼記録のために、まず太枠の中に氏名などを記入してもらってもいいですか」


 晴真は言われるがままに、氏名と連絡先を記入する。


「住所も書いたほうがいいですか」
「そうか、セキュリティ的な問題があるのか」


 勝手に自己解決させたが、一弥は確認するように知由を見る。


 知由はフードを被り、顔を一切見せていない。
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