探偵少女
「大丈夫です。連絡先が分かっていれば、十分なんで」


 晴真が記入し終えると、一弥は紙とペンを受け取る。


 それから本題に入る前に記入できる箇所を書き込んでいく。


「あの、探偵って彼女ですよね?」


 手持ち無沙汰になった晴真は、知由が寝ていると思っているのか、小声で尋ねる。


「そうですよ? われわれ店員は、ただの三崎の駒です」


 てっきり助手だと言われるものだと思っていたから、その単語が耳に馴染まなかった。


「駒……」


 自分で発することで、その単語がなにかを認識する。


 人に対して使っていい単語ではなく、やはり、晴真の脳は情報処理ができない。


「それも役に立てばの話ですけど」


 どう反応するのが正解なのかわからない発言が続き、晴真は混乱に混乱を重ねていた。


 一弥は咳払いをして、話に区切りをつける。


「では、本題に移らせてもらいます。朝原晴真さん、十八歳。職業は俳優。今回の依頼内容は?」
「……ストーカーを止めて欲しくて」


 一弥は記録用紙に『ストーカー』と書き込む。


「なるほど……三崎が興味を持たないわけだ」


 納得する一弥に対して、晴真は顔をしかめる。
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