探偵少女
 そう思ったが、店内で騒ぎを起こしていても、確信に迫るようなワードは避けて言い合いが繰り広げられている。


「……何事」


 知由の独り言を聞き取った友奈が、知由に近付く。


「夢里さんはどうしても、彼がなんの対策もせずに帰ることが納得できないみたいよ?」


 耳打ちされて、知由は綺麗な舌打ちをした。


「夢郷さんには悪いですけど、俺は彼女の態度が気に入らないんです。だから、依頼はしません」
「知由に頼りなさいって言ってるわけじゃない。危険だから、そのまま放置するのはやめるべきって言ってるの」


 夢里の言葉を聞いて、知由は動いた。


 端にあるテーブルの片付けをしている男性スタッフに近寄っていく。


「蒼空」


 呼ばれた町田蒼空は、片付けの途中だというのに、放置して知由のもとに来る。


 まるで、しっぽを振る犬だ。


「はい、知由さま」


 蒼空はフリーターであり、自称知由の信者。


 ゆえに、年下である知由に対して、“さま”付けしている。


「奴のボディガードをお願い」


 知由に直接頼まれたことで、蒼空は目を輝かせる。


「喜んで。すぐに準備してきますね」


 蒼空は詳しく知らないはずなのに、即答し、スタッフルームに向かう。
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