探偵少女
　知由が言うと、友奈は頬を膨らませる。


「いくら三崎でも、それは言いすぎ」
「ただの事実」


　知由は言いながら、喫茶店『Alice』のドアを開ける。


　常連客の多い店だが、新規も少なくない。


　新規客は、知由に目を奪われている。


「見た目詐欺師め」


　あとから入った友奈は、知由にしか聞こえない声でこぼす。


　知由が振り返り、二人は笑顔の裏で睨み合いをしている。


「ちぃちゃん、友奈ちゃん、おかえり」


　仲裁の声に、友奈は笑顔を見せる。


「雪兎さん、こんにちは」
「妖怪猫かぶり女」


　友奈のワントーン明るい声に対して、知由が小声で嫌味を言う。


　打ち切られたはずの睨み合いが、再開する。


「お前ら、今日も仲悪いな」


　その間を、Aliceの店員である成瀬一弥が通る。


「一弥さんも、三崎に言ってくださいよ。その性格の悪さ、直せって」


　友奈に言われた一弥は、知由を一瞥する。


　愛想笑いもしない知由が、そこにいる。


「いや……もう手遅れじゃね？」


　一弥が言うと、知由は笑顔を返す。


　しかし、その目は笑っていない。


「就職先も見つけられず、ダラダラとここの店員を続けているダメな大人には言われたくない」


　鋭利な言葉に、一弥はなにも言い返せない。
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