探偵少女
 それは友奈にも想像できて、同じく苦笑いを返す。


「あの写真を撮った人、特定すると思います?」
「それはするだろうね。特定するだけで済めばいいけど……」


 二人揃って済むわけがないと思っているから、互いに作り笑いをする。


「雪兎さんは、誰がやったのか、目星はついているんですか?」


 たまごサンドを一口齧り、その美味しさに驚く。


「常連さんじゃないのは、確かだろうね」


 推理力の低い雪兎が言い切っているのが珍しく、友奈は二口目を食べながら、次の言葉を待つ。


「ここには夢里さんがよく来るから、みんな芸能人には耐性がある。そして、ゆっくりする場であることも理解してもらっているから、それを邪魔する行為はしない」
「それでも、好奇心から写真撮ったりとかありますよね?」
「まあね。でも、みんながみんな、芸能人に会いに来てるわけじゃないんだよ。ここには、くつろぎに来てる。だから、そういうことは少ない」


 言われて思い返せば、夢里が来ても、晴真が来ても、騒ぐ客はいなかった。


 反応して声を出したのは、友奈だけ。


 これは雪兎が推理をしているというより、ちゃんと客のことを知っているというほうが相応しいのかもしれないと思った。
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