探偵少女
 トゲのある言い方に、雪兎はいたたまれなくなる。


 見るからに困っている雪兎に満足すると、滋は両頬を軽く叩いて、気合を入れる。


 そして、スタッフルームのドアを開けた。


「仕返しをしよう、みさきちゃん」


 唐突に言われ、知由は唖然としている。


 しかし滋は満面の笑みだ。


 気遣いの色など、微塵も感じさせない。


「使えるものは全部使って、相手に後悔をさせるほど仕返しをする。それが、僕たちの知っている三崎知由だ」


 知由はまたフードを深く被る。


 表情は見えないが、その口元は確かににやついている。


 滋は、いつもの知由に戻ったと思った。


「……生憎、それは昔の話。私は、自分の足で事件を解決したい。それが楽しいの。だから、滋の力は借りない」


 だが、返ってきた言葉は予想外のもので、滋は反応に遅れる。


「事件って、そんな大袈裟な」
「朝原晴真はストーカー被害に遭っている。今回の騒ぎは、それがきっかけ」


 知らない情報を後出しされて、滋は恨むように雪兎を見る。


 雪兎自身、説明不足であったことは自覚しているからこそ、その視線から逃げる。


「ストーカーか……それってさ、世間に知られるとヤバいんじゃない? ストーカーを刺激することになるよね」
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