探偵少女
「言葉遣いは丁寧になってるし、仕草も大人っぽくなってる。知由、また知らない間に成長したね」


　知由はわかりやすく、視線を泳がせる。


「照れてる」


　友奈が隣に座り、三ラウンド目の睨み合いが始まる。


「もう、二人とも落ち着いて」


　雪兎はコーヒーを知由の前に、カフェラテを友奈の前に置いた。


　そんなやり取りを、夢里は微笑ましそうに見ている。


　その視線は、母親の優しさそのものに見える。


「二人が仲良いのは変わってなくて、安心した」


　知由は夢里の言葉を鼻で笑った。


「私と中矢が？　冗談言わないで」
「それはこっちのセリフ。けど、誰のおかげでちゃんとした話し方ができるようになったのかだけは、忘れないでよね」
「雪兎かな」


　即答だった。


　対する友奈は、まるで答えを知っていたかのような反応速度で、知由の肩を軽く殴る。


　そして、盛大に息を吐き出した。


「なんで雪兎さんはこんなに優しいのに、妹はそんな悪魔的性格なわけ」
「兄妹と言っても、義理。血の繋がりはないから」


　知由の発言に、雪兎は少し寂しそうに笑う。


　友奈は発言を間違えたと思ったが、謝るのも違うと思い、気まずさだけを感じた。


　しかしそんな空気は、ドアベルにより消された。
< 4 / 78 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop