探偵少女
「どうしてこんなことに……」


 蒼空の疑問に答えてくれる人は、どこにもいなかった。





 喫茶店『Alice』では、穏やかな時間を過ごせるはずなのに、普段入らないスタッフルームにいる友奈は、不満溢れる顔をしている。


 知由と二人きりの室内は静かであるが、落ち着いているというよりは、空気が重いというほうが相応しい。


「まったく……今朝の反撃する気しかなかった三崎はどこに消えたわけ? まるで別人なんだけど」


 友奈はカバンに入っていたクッキーを頬張る。


 知由は、滋に言われたことで少しは立ち直っていたが、まだ本調子ではなかった。


「腑抜けた顔なんかして、らしくない。これなら、和野さんの言ってた通り、終わりかもね」


 長年一緒にいたことで、知由のオブラートに包まない物言いが似てきたらしい。


 言葉の暴力の効果は抜群で、知由は反論しない。


「……和野?」


 だが、思考は止まっていなかった。


 友奈は頷く。


「言われた通り、話だけ聞いてきた。ほとんどが興味本位の質問ばかりだったけど、和野さんだけは、三崎への評価が下がったことを喜んでいた」


 知由の目付きが変わる。


 僅かでも、いつもの知由に戻った気がして、友奈は片側の口角を上げる。


「このままでいいの?」
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