探偵少女
case4
 たった一人の存在で、いつもと同じ現場の空気は、一変していた。


 その人を囲んでいたり、みんな忙しそうにしながらも、横目に見たりしている。


 晴真も蒼空も、その人物が誰なのかわかると、固まってしまう。


「なんで……」
「知由さま……?」


 知由には二人の声は聞こえていなかったが、周りの反応で、晴真たちに気付く。


「朝原さん」


 知由は、二人に駆け寄る。


 優しそうに微笑む知由を、二人は知らない人だと思った。


 晴真と知由が揃ったことで、周りの声が騒がしくなる。


「この前はごめんなさい」


 知由がいることに理解が追いついていないのに、唐突に謝られて、ますます混乱する。


「私、朝原さんの演技についていろいろ言い過ぎちゃって……素人が、本当にごめんなさい」


 当然、そんな会話をした記憶もなく、晴真は反応に困る。


「あのー……もしかしてネットの写真って、そのことで言い合ってるところの写真だったりする?」


 晴真が言葉を返せずにいると、一人が恐る恐る声をかけてきた。


「そうなんです。私、朝原さんを傷付けるだけにとどまらず、迷惑までかけてしまって、本当に申し訳なくて……本当はすぐに謝りに来たかったんですが、思いのほかネットの影響は大きくて、なかなか身動きが取れなかったんです」
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