探偵少女
「雪兎、なんで出ないの」


 知由が文句を言ったとき、蒼空が窓ガラスをノックした。


 知由は少しだけ視線を動かして、なにも見なかったというような反応をする。


 しかし雪兎が、蒼空を無視することを許さなかった。


 知由の意に反して、窓ガラスが開いていく。


「ちょっと」
「ちゃんと話すべきだよ」


 それでも知由は、蒼空を見ようとしない。


「知由さま、ごめんなさい」


 窓ガラスがすべて開くと、蒼空は一番に謝った。


「僕、知由さまのことを知ろうとしてる人が嬉しくて……不特定多数に教えるようなことをしてしまって、本当にごめんなさい」


 蒼空の言い訳に、知由は反応した。


 蒼空は怒られることを覚悟する。


「城井深雨と知り合いなの?」


 だが、言われた言葉は予想とはまったく異なったことと、知由がそう聞いてくる理由がわからず、蒼空は首を傾げる。


「城井……それって、朝原さんに聞くようにって言われた人ですよね? 僕、知らないですけど……」


 知由は大きくため息をつく。


「あのアカウントの持ち主とは、ネットで知り合った? それとも、もともと知り合いだった?」


 蒼空は混乱したまま質問に答える。


「あのアカウントの人は知らないです。僕のタイムラインに出てきた投稿に、コメントをしただけなので」
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