探偵少女
「ストーカー事件を今後どうしたいのかをお聞きしたくて」


 一瞬、晴真の顔が強ばったのを、知由は見逃さない。


 十二分に間を作り、晴真は口を開く。


「……興味ないって切ったのは、貴方でしょう」
「言葉を間違えたと思っています。ごめんなさい」


 立て続けに謝られて、逆に怪しんでしまう。


 知由はそれを感じ取り、目を閉じて、ゆっくりと画面を見直す。


「……男性芸能人のストーカーなら、女性の可能性が高い。それも、メンヘラ気質がありそうな。そこに、女である私が近くにいると、ストーカーを刺激することになると思った。そのときは、貴方が危険な目に遭う。だから、断るべきだと考えたのです」


 知由の真剣な表情と言葉に、晴真は自分の判断が間違っていたのだと思った。


 しかし、言葉を間違えたというよりも、断るのが下手と言ったほうが正しいのではないかという説明だった。


「この話をするためだけに、わざわざ現場に?」
「直接謝らないと、私と話そうとしてくれないだろうと思ったので」


 晴真が答えないのは、図星だったからだ。


「気が変わったということですか」
「これだけ騒ぎになっておきながら、まだ遠慮する理由はないと思っただけです。あと、純粋に私のやりたいことを邪魔されたのが、気に入らない」


 付け加えられた理由が正直すぎて、晴真は笑ってしまった。
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