探偵少女
 笑われたことは不服だが、堅苦しい空気が和んだことに、知由は少しだけ安心した。


「私情ですか」
「やられっぱなしの私は、私らしくないらしいので」


 晴真の空気が柔らかくなっても、知由は態度を変えない。


「わかりました。ちゃんと話します」


 気が済むまで笑うと、晴真はそう言った。


『この人には話したい、話してもいいと思ってもらわないと』


 晴真の言葉を聞いて、滋が言っていたことを改めて理解したような気がした。


 しかしこの空気を狙って作ったわけではなかったため、複雑な気持ちだった。


「ストーカーをどうしたいのか、ですよね」


 晴真に確認され、頷く。


「俺としては……ストーカー行為をやめさせたいくらいです」


 欲しい答えがもらえず、知由は若干不満そうだ。


「随分と甘いことを言うんですね」
「貴方がこの前言ってた通り、芸能人になった時点でストーカー行為をされる覚悟はしていました。ただ、自分のファンが警察のお世話になるのはちょっと……」


 晴真の瞳に切なさの色が滲む。


「仕返ししたいとかは?」


 しかし知由は容赦なく、自分の求める展開に持ち込もうとした。


「あまり思ってないです」


 即答ということは、本心ということ。


 知由はまた不満を見せる。
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