探偵少女
「注意した程度で、やめてくれるといいですね」


 嫌味でしかない言葉に、苦笑することしかできない。


 本人が望んでいない状況が気に食わなかったが、それだけを言って、気持ちを切り替えるように、小さく息を吐く。


「私は、城井深雨がストーカーだと思ったんですが」


 その名前を出すと、晴真は視線を落とした。


 穏やかだった空気が、静かに重たくなっていく。


「彼女が俺を追いかけるわけがない」


 晴真の表情は見えない。


 ただ、その声だけで、晴真が後悔していることは分かる。


「どうして言い切れるんですか?」


 それでも、知由の態度は変わらない。


 いろんな感情が混ざって、晴真は笑顔を作る。


 それは表現者とは思えないほど、見ていられないものだった。


「彼女に嫌われてるから」
「それは、ストーカー紛いのことをしたからですか?」


 正直すぎる知由を見た晴真の目は、大きく開かれている。


「……そんなことも知ってるんですか」


 勝手に調べられて、いい気がしないのは当然だ。


 せっかく信頼の糸が見えたのに、切れてしまいそうな予感がした。


 知由は自分の勝手な行動を悔いる。


 しかし謝るという手段には出なかった。
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