探偵少女
 これが三崎知由という人なのだとわかってきたため、晴真は怒りを感じなかった。


「まあ……そう、なんでしょうね」


 晴真は苦い過去を思い浮かべ、笑顔を作る。


 思い出したくないのだろうということは表情を見れば、容易にわかる。


「なにをしたんですか?」


 だが、情報を集めたい知由は、気を使おうとしなかった。


 晴真はどこから話すか悩み、一から話すことにした。


「いわゆる一目惚れってやつでした。それも、結構強烈なやつ。どうしてもこの人がほしい。直感でそう思いました」


 晴真の恋愛話には興味がないという顔が見える。


 晴真はそれ以上、どんな恋愛をしたかを話すのはやめた。


 手短に、自分がなにをしてきたのかを話していく。


「よく、彼女に話しかけにいっていたんです。まあ、彼女は大人しい子で、あまり話してはくれなかったけど」


 知由の反応を見たくないのか、画面の向こうの晴真とは目が合わない。


 画面の隅にゴミを見るような目が映っていて、気付かれる前に表情を作る。


「昼休みのたびに彼女の席に行ったり、移動教室は常に彼女の横を歩いたり」
「ストーカー……」


 きっと、話が終わるまで我慢しようと思っていた。


 だからこそ、知由自身、その発言に驚いている。


「そう言われても仕方ないことをしたと思ってます」
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