探偵少女
 晴真が落ち込んでいるように見えて、知由は慌ててフォローする。


「でも、思春期男子のよくある、可愛い暴走なのでは?」
「だとしても、彼女が学校に来る回数が減っていったので、嫌がられていたのは確かだと思います。俺が怖がらせたんだ、二度と近寄るなって言われたし」


 知由の視線が鋭くなる。


「誰に?」
「彼女の双子の姉です。城井……楓花、だったかな」


 把握していない名に、知由は考え込む。


 それは真剣そのもので、晴真の中で知由への印象が変わっていく。


 本当に伝え方が下手なだけで、遊びで探偵をしているわけではないのだと、改めて感じた。


「……城井楓花がストーカーの可能性は?」
「それもないと思う」


 知由が導き出した一つの仮説を、晴真は即座に否定した。


「女と話すなとか、俳優をやめろとか、私だけを見て、みたいな手紙が届いていたから」
「なるほど……」


 再び、知由の考える時間ができる。


 考えるときに唇に触れるのは癖なのだろうか、なんて思いながら、知由の次の質問を待つ。


 しかし無言の時間が続いて晴真が退屈していると思った知由は、唇から手を離す。


「あとはこっちで調べてみます。話してくださり、ありがとうございました」
< 66 / 78 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop