探偵少女
 晴真は知由の発言だけでなく、知由と友奈の関係性にも困惑の色を見せる。


「うお、有名人がいる」


 厨房から出てきた、なにも知らない一弥が言うと、夢里は不服そうにする。


「その反応はいただけないなあ、一弥くん。私も有名人なんだけど?」
「いや、夢里さんは三崎の母親だし、よくここに来るんで、今さら驚かないですよ」


 一弥の言葉に、知由がそれはもう鋭い視線を向ける。


 間違ったことを言っていないのに睨みつけられ、理不尽だと思いながら、一弥の視界に晴真の表情がちらついた。


「あー……まだ言ってなかった感じ?」
「いえ、言うつもりなかった感じのやつです」


 友奈が一弥の言い方を真似て返す。


 一弥は恐ろしそうに、知由を見る。


 なにも見せない、無表情。


 ある意味それが、一番恐ろしい。


「あの……」


 一弥が恐怖に震えていると、晴真が様子を伺うように手を挙げる。


「夢郷さん、お子さんがいるんですか?」


 一弥は救われたと思った。


 まだ誤魔化せると。


「いるよ? あそこに座ってる黒髪の子。三崎知由っていうの。可愛いでしょ?」


 しかし、一度話題に出たからもういいだろうと思った夢里が、嬉しそうに話した。
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