愛しい君へ

平井は戸惑いながら…
「あのさ〜上野と薫ちゃんは夫婦じゃあないの？」

「1年前に離婚したんだ」

「あ…悪りぃ。」
俺が平井に向き合って話しを聞く体制をとると平井が話し始めた。

「これはあくまでもお袋から聞いた話しだけど、
薫ちゃんちとウチは同じ町内会でさ〜
お袋を含め数人のおばちゃん達は、よくお茶飲みしてるんだけどさ〜
去年の秋から松本のおばさんがお茶飲みに来ないから、皆んなで松本家に押しかけて理由を聞いたらしんだ。
そうしたら、松本のおばさんが泣き出して『薫は余命半年なの…』って言って、
毎日、薫ちゃんの看病も兼ねて病院に通ってるって説明したらしい…

他のおばさんが病院は？って聞いたら、もう治療や手術もしないと本人が決めてホスピスに入ったって。
病名を聞いたら、ガンだと答えたらしいよ。」

「ガン……去年の秋に余命半年？……」俺は知らない間に涙を流していた。