先輩、お久しぶりです

「あ、これなんかいいんじゃないですか?」

「どれ?」


私が画面を向けると、近づいてきた先輩と肩がぶつかった。
横を向いたら顔が触れ合うくらいに近い。
その近さに急に心臓が跳ね上がり、また逃げてしまいたい衝動に駆られた。


「え、えと、この体験型ギフトカタログです。これなら自分達で選べてクルージングとかレストランで食事するか旅行か……色々決められるじゃないですか。それにデパートに行かなくても、今すぐ注文出来ますよ?」

「確かに」

「美香も安定期過ぎたし、お腹もそれほど大きくないから動けるのは今のうちだと思うんです。子供が産まれたら気楽に外出も出来ないだろうし」

「やけに詳しいな」

「うちの姉を見てたので」


先輩が振り向いた拍子に私は咄嗟にソファに飛び戻った。
もちろんそれが不自然なのは鈍感そうな先輩でも分かったかもしれない。


「……なるほどね」


ほら、変な間があった。


「ということで、私の今日の役目は終わったので帰りますね。ごちそうさまでした」


立ち上がり、そそくさと帰る準備を始めようとした瞬間、手首を引っ張られソファに尻もちをついてしまった。


「きゃぁ!な、なんですかっ!?」


驚いて先輩の顔を見るとまた真顔になっている。
こっちは勢いよく倒れたせいで変な格好になり、簡単には起き上がれなくなっている。


「映画観てかないか」

「……は?」


え、映画!?
この期に及んで映画!?なにゆえっ!
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