先輩、お久しぶりです
――ようやく終了の時間となり、とりあえずこの場はお開きになったけれど、二次会に行く人が集団になって次のお店へと足を運んでいた。
私は行く気になれず、そのまま解散することに決めた。
「若宮ちゃん帰っちゃうんだね。残念だけどまた一緒に飲んでね〜」
「はい、また機会があれば」
酔った他部署の方々に声をかけられ、ペコリとお辞儀をしてから皆とは反対方向に歩きだした。
やっと終わったという安堵もあり、足早に駅のホームへ向かう。
早く帰ってゆっくりしたい。
明日は休みだし、のんびりお風呂に入って久しぶりに先輩とやりとりした嫌な気持ちと、飲み会の疲れを癒すんだ。
そんなことばかり考えながら向かっていると、後ろから聞き慣れた声で呼び止められた。
「お前、男のあしらい上手くなったな」
「え?」
振り返るといつのまにか背後に昂良先輩がいた。
「なっ、なんですかっ」
「いや、慣れたもんだなと思って」
何言ってんのよこの人。驚かさないでよ。
「……は?付いてこないでください」
「悪いけど俺もこっちなんだよ」
「あっそうですか。じゃあ私はこれで失礼します」
距離を取ろうとさっと改札機を通って早足でホームに降り、これで離れたかと思いきやまだ背後にいた。
「なんでいるんですかっ」
「それはこっちのセリフ。お前こそついて来んなよ」
「明らかにそっちが後ろですよね」
また怒りがぶり返してきそうになりながら、違う乗り口に並んだのにそれでもまだ背後にいる。
「ストーカーですか?」
「お前がな。俺の乗り口はここなんだよ」
「分かりました。ではさようなら」
そう言って振り切るようにまた違う乗り口に並んだのに……。
「ちょっと!わざとですよね」
「自意識過剰すぎ」
「――なっ!」