先輩、お久しぶりです
◇◇◇

先輩の告白を受けてから約2週間、いまだ返事を返せずにいる。
さらには連絡も取っていない。


先輩からラ◯ンや電話が来ても、どう返事をしていいか分からず悩んでいる間に、無視したような状態で時間が過ぎてしまったというのが理由。


会社でも極力会わないように、なるべく人目を避けて行動していたから余計に顔を合わせづらくなっていた。


このまま避け続けてズルズルと時間だけが過ぎて行くのは良くないと思いながら、なかなか心の整理が追い付かないのが現状。


正直、先輩からの告白は飛び上がるほど嬉しかった。
声にならない喜びで胸がいっぱいだったけれど、本当に付き合っていいのかと即座に悩んでしまったのだ。


またあの頃のように背中を向けられたら……そう思うと怖くて。もし昔のように冷たく背中を向けて去られたら今度こそ立ち直れない。
そんな昔のトラウマに縛られて、嬉しいはずの告白に尻込みしてしまった。


「それは、付き合ってみないと分からないんじゃない?」


休日、陵介先輩が仕事で出勤になったというので、美香から「お昼ご飯うちの家で一緒に食べない?」というお誘いを受けてお邪魔していた。


訪ねて早々冴えない顔をしていた私に気付いて、何があったか問い詰められ経緯と心境を話したのだ。


「数年越しの告白嬉しかったんでしょ?」

「うん、それは、まぁ……」


美香が作ってくれた和風パスタと、私が来る途中にお惣菜屋さんで買ってきたデミハンバーグとポテサラをそれぞれお皿に並べながら、俯き加減に歯切れの悪い返事をした。


「千春が怖がる気持ちも分かるけど、昂良先輩だって軽い気持ちで()ったわけじゃないと思うよ」

「どうして?」

「逆の立場から考えれば、裏切られたって気持ちがあっただろうし、千春と同じようにまた付き合って二股されたらどうしようって、普通なら二の足踏むと思わない?
でもそれ以上に千春のことが好きだったから、勇気出して告白してきたんじゃないの?」

「……」


『裏切られた』

その言葉は会議室でセットアップしている時に昂良先輩にも言われた言葉だ。
けれど、あの時は裏切られたと言えるほど私たちの仲は深くないと思っていた。だからその言葉の意味に混乱したのだ。


でも、先輩からすると付き合ってると思ってた人が親友と二股していると聞けば、裏切られたと思うのも当然だ。
誤解が解けたとはいえ、先輩だってトラウマになっててもおかしくはない……。

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