先輩、お久しぶりです
テーブルにお皿を並べながらシュンとなる私を見て、ティーポットに淹れたやや濃い目のオレンジ色したダージリンティーを、ティーカップに注いで目の前に出してくれた美香。
「でもさ、私は嬉しいよ。
こんなに日が経っちゃったけど、当時の必死な千春の努力がようやく報われた気がして。お互い辛い気持ちがあったとはいえ、やっと打ち解けてくれたと思うと感慨深いじゃない。
千春も思うところは色々あるだろうけど、素直になってみなよ」
「……う、ん」
美香は私を思い遣って言葉にしてくれる。
そして当時の辛かった心情を分かち合ってくれる。そんな友達がいるのは、本当に有難いことだ。一人じゃないんだと心強く思える。
「あの、さ……美香は」
「ん?」
「当時……私と先輩って、付き合ってたと思う?」
「うん」
そ、即答?
「どうして?」
「だって、周りのことなんてまったく視界に入らないくらい昂良先輩とイチャイチャしてたじゃない。
だから二人でデートするようになって、やっと付き合ったのかって当時陵とも話してたんだよ。あとで何もなかったって聞いたときは相当驚いたけど」
「イチャイチャって……」
珈琲研での活動以外、一緒に遊園地や水族館、映画にも行ったし日帰りの観光もした。
それ以外にもたくさん色んなところへ行った。
確かにデートで行くような場所へは何度も行ったことはある。
でもそれが付き合ってるから行ったという自覚はなかった。
付き合ってる『みたいな』気持ちで一緒に行動してたけれど、そうではなかったから。
それに何の言葉もなく付き合ってると思うのはあまりに身の程知らずだと分かってたし、やっぱり告白の言葉がなければ踏み出せなかった。
でも、傍から見れば私と先輩は付き合ってるように見えてたのか……。
「とにかく私が言えることは、断るも付き合うも千春が後悔しないようにするしかないってこと」
「うん……」
煮え切らない返事しかしない私に美香は困惑の表情を浮かべつつも、ハンバーグを切り分けてパクパクと口に運んでいた。
妊婦はお腹の空く感覚が短いらしく空腹のままだと気分が悪くなるようで、話をしながらなのにお皿の上にある料理の減るスピードが速い。
反面私は物思いに耽りながら、のろのろと口に運ぶだけだった。
「ねえ、千春」
「なに?」