先輩、お久しぶりです
安泰
唇や頬にサワサワと触れる感触に気づき薄っすら目を覚ますと、程よく筋肉のついた胸元が視界に入り大きく目を見開いた。
「おはよう」
「――っ!?」
一瞬状況が把握できず、胸元から首筋、顎から唇そして鼻筋を通って優しい眼差しにたどり着いて固まってしまった。
横たわったままの先輩が私を優しく見つめながら、頬に触れている。
昨夜、先輩と初めて一夜を共にした。
すべての誤解やすれ違いも解け、ようやく恋人同士としてお互いを求め合った。
壊れ物を扱うように優しくそれでいて熱く、これ以上ないほどの喜びに溢れ幸せに満たされた。
またあの頃のように、時々笑い合いながら戯れるように絡まり合うと、触れ合う温かさに安心することができた。
そう確信が持てるほど、お互いの隙間を埋め合ったのだ。
けれどいま私を見つめる顔を見ると、昨夜の艶めかしい表情を思い出して、顔が一気に赤くなった気がする。
「お、はようございます……」
「よく眠れた?」
「はい……もう、ぐっすり」
「だろうな。昨日は無理させたから」
そう言われ、余計に顔から火が出る勢いだ。
なのに先輩は昨日の弱気な顔つきとは打って変わって、蕩けそうに甘い顔をして私を見つめている。
「い、いま何時ですか?」
「6時過ぎ。あんま寝てないからもう少し寝てろよ」
シーツをたぐり寄せ鼻の先まで隠している私のおでこにチュッとキスを落とした。
明るい場所でこの状況は、あらためて恥ずかしい……。なのに先輩は私に近寄ってくる。
「それともまた、する?」
「ね、寝ます!」
妖艶な笑みでそう言われ、ボンッ!と爆発しそうになる顔を隠して逃げるように逆を向いた。
といっても、心許ない格好で抵抗してもなんの説得力もない。
ベッドの端から落ちそうになりながら、床を見るとそこら中に衣服が散らばっているのが目に入った。
いくら無我夢中だったとはいえ、羞恥に目を覆いたくなる。
「ひゃあ!」
唐突に伸びてきた手で素肌を擦られ、肩にキスを落とされた。ドキドキしながら顔だけ振り返って見ると、色気を放った上目遣いと目が合う。
「やっぱ、俺が寝れそうにないわ」
「え!?ま、待っーー」