先輩、お久しぶりです
◇◇◇
「広報へパンフレット取りに行ってきます」
「はーい、行ってらっしゃい。あ、若宮ちゃん!ついでで申し訳ないんだけど受付に寄って名刺受け取ってきてもらえないかな」
「はい、分かりました」
秘書室に常備している不足分のパンフレットを受け取りに行こうと思ったけれど、先に1階の受付へと向かうことにした。
「お疲れ様です。役員あての名刺受け取りに来ました」
大きなロビーを入った正面に受付がある。
そこには受付嬢二人が待機していて、いつでも来客対応できるように品よく笑顔を浮かべている。
「あ、若宮さん、お疲れ様です。わざわざありがとうございます」
「こちらこそです。いま大丈夫ですか?」
「はい。とりあえず昨日までの分はざっと100程度はあると思います」
まとめて束になった名刺を輪ゴムで仕分けして、わざわざ茶封筒に入れて渡してくれた。
「今回もわりと来てますね。いつも対応ありがとうございます。あ、これお裾分けです。休憩の時にでも召し上がってください」
受付に行く時は、毎回紙袋にお菓子を詰め込んで持って行くことにしている。
嫌な顔せずいつでも丁寧な対応をしてもらっている、気持ちばかりのお礼として。
「嬉しいですー。いつも若宮さんからいただくお菓子じつは楽しみにしてるんですよ」
「ふふふ、珍しいお菓子いっぱいもらうのでまた持ってきますね」
「いつもすみません」
「美人さんたちが顔突き合わせてなに喋ってるの?」
ふいに受付越しに声をかけられ、驚いてロビーの方へ目を向けると的場さんと昂良先輩が外回りの帰りなのか、スーツにビジネスバックを片手にこちらに向かって歩いてきていた。
「お疲れ様です」
彼女は受付嬢らしく手をお腹の前で重ねて、お辞儀をしてあいさつを返した。
私も少しだけ頭を下げたけれど、先輩と目が合って一人ドキッとしてしまう。
あらためて付き合うことになっても、そんな関係になったからこそ顔を見ただけで変に意識して余計にドキドキしてしまう。
これじゃあ学生の時より重症かもしれない……。