先輩、お久しぶりです
「さてさて」
的場さんが肘をつき手を組んだ上に顎を乗せ、やけに含みのある笑顔で口火を切った。
「じゃあ、説明してもらおうかな。千春ちゃん」
「私も聞きたい」
「同じく」
三人が三人とも前のめりでじっと見つめてくる。
「えっと……」
会社近くにあるお蕎麦屋さんに入ったものの、店内には昼食を食べにサラリーマンやOLが賑やかに食事を進めている。
なのに私たちはそれぞれ届いた蕎麦に手もつけず、まるで警察の取り調べかのように向き合い私が口を開くまでじっと待っている。
二人からは『もう分かってるから早く白状しなさい』という雰囲気が痛いほど伝わってくる。
きっと的場さんからある程度聞いてるんだろう。
となると今さら隠す必要はないけれど、かといって自分の恋愛を上機嫌に話す事でもない。
というより、話してもいいのだろうかと三人の生温かい笑顔を見て思う。
「えーと、どこから話していいか分からないですけど……」
と何か悪いことをしたわけでもないのにもごもごと言い淀んでいると、背後に誰かが立っている気配がした。
「ここで何してるんだ?」
よく知った声に振り返ると、昂良先輩が立っていた。
その顔は偶然出くわして驚いている顔ではなく、眉間に皺が寄った不審な目で見下ろしている。